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結社グループ誌詠草

 『 混 乱 』

★ささくれた言葉とこころ丸投げのあさ山ふじは淡きむらさき

★すれ違ふ時間の中で沈黙の迷い子ひとり眠ってしまふ

★魚の居ぬ人造池に飼はれたる鴨いくたびも逆さになりて

★晴れわたる五月の朝に三人の喪服の女の終はらぬ会話

★ぎやあ遅刻すると叫びてそれすらもゲームのやうに楽しんでをり

★来院のたび待合の人の増えちみりちみりと世界が歪む

★診察も処方も薬も何せむに世界のひずみに呑み込まれゆく

★制服を脱ぎ捨てくわえ煙草なるアリスは鏡のなか哄笑す

★月のなき夜よりも深き闇にゐてなほなほ笑へ人間ひとり

★ひたすらに求むるのみの泣き声をあげる赤子の頬のまろさよ

★山道のみどりのなかに逃げ込まむ街のあかりのかまびすしければ

★水無月の苗整然と植ゑられしまま雨のなかうすくけぶれり

★うつし世に居場所を見つけられぬまま山あいの湯に浸れるひとり

★新緑のくすくす笑ふこゑのして顔をあぐれば空に残月

★移りゆく季節に取り残されしままいよよ濃くなる山のみどりよ

★わがままな己を疎みつつ臥せば夜明けの屋根に雀さへずる
by sei_97 | 2007-05-30 23:39 | 短歌
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